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何も無い日を盛る

目覚めた時には既に太陽の光が、カーテンの隙間から私の顔をめがけて差し込んでいた。
「眩しい…」
と思うほどまだこの季節の太陽は強くない。冬がなかなか終わろうとせず、そこまで来る春を遮っている。まるでどこかの国の景気のようだ。
「七時三十六分、まあこんなもんか」
最近では六時台の後半から七時台の前半に起きることが常になっている。動物的な事を言えば陽が当たって起きるのが一番自然なのであり、日照時間の差による温度の変化もスムーズな起床に欠かせない。不快なベルや携帯電話のアラームには自然に起こるズレが無い。
「今日はピザソースでパンを焼こうか、それともいちごのジャムにしようか」
育ち盛りがいつあったのか、もしかしてそれは今なのかと思うほどの食欲。朝は気持ち悪くて食べる気がしないなんて言わないよ絶対。

余談だが、私の食生活は基本的に乳酸菌で始まり乳酸菌で終わる。朝のヤクルト、夜のヨーグルト。別に腸を気遣っている訳ではないが、もはや習慣となっている。

珈琲の粉をカップに入れ、未だにティ◯ァールではなくヤカンから湯を注ぐ。砂糖は入れない。ミルクは牛乳と決めている—カルシウムを自然食品から摂りたいのだ。テーブルに皿とカップを置き、深夜アニメを再生しながらの朝食。決して今日一日をよくしようなんて前向きなことは思わない。ただ、機嫌良く過ごせたらいい。それだけだ。
「昨日はニューヨークがいい感じに値上がっている」
そう思って証券会社の口座にログインする。九時に開くマーケットを眺めながら、値動きに一喜一憂している。何枚かあるディスプレイのうち一枚はどうでもいいツィッターやニュースが表示されている。
「おれも世界の中でのポジションはこのディスプレイのようなものかもしれないな」
そんなことをつぶやくためにツィッターがあるのかは知らないが、まあそんなのを思わない人がつぶやく必要はない。しばらくして、前場が引けた頃から軽く本を読む。週に十冊くらいまとめて買っているが、一冊を集中して読むことはしない。余程面白いと別だけどそんなことは珍しい。ところで、よく本を読むと眠くなるという人がいる。おれも昔はそうだったけど、それはつまらない本ばかりだからそうなったわけで、乱読し多くの本に接すれば、一つくらいそうならない本がある。読書に限らず、多くのことはそう。一部を知って全体がわかるものではない。
「そういえば、散髪屋のクーポンがあったなあ」
ほんとは髪をもっと伸ばしておきたい、しかし諸事情でそうもいかない。シャンプーでは変わら無い毛質、体質を改善しても変化の無い毛質、こういうところで人はホルモンやDNAに壁を見いだす。いや、しかしこれもまたおれの知る一部なのかもしれない。
「めんどうだな、髪を切るだけだと言うのも」
私の生え際は、特に後ろはかなりキワキワに生えている。だからあまり短く切れないと言われたことがある。従って、それにあわせて短くすると全体のショート加減が過ぎたものになる。それがいやだからまあまあな長さにし、すぐ伸びてきてうんざりする。何ともどうでもいい悩みだ。
「二時間?じゃあいいです」
たまには都合良く髪を切れないこともある。風が強く、微妙に冷える。ちょうどいいアウターも持ち合わせていない。そう思って車で出てきたのに、無駄にガソリンを使っただけだ。田舎なのに狭い道を通り、ガラクタのバラックのような家の間を曲がり曲がって、かつての九龍城のような大衆のモールへ。
「若い時間を過ごす場所じゃない」
何度そう思ったか。同じ古都でもなぜ奈良に。かつての某の歌ではないが、
ハァ〜
墓しかねえ♪古墳だけ♪
掘っては掘っては調査して♪
進まねえ♪進まねえ♪
高速道路が通らねえ♪
連合に♪入らねえ♪
それでリニアがハぶられて♪
大仏と♪鹿だけと♪
言われて返す言葉がねえ♪
おらこんな場所いやだ〜♪おらこんな場所いやだ〜♪
行き交うクルマは軽とミニバン。寂れた街にはお似合いだ。

ヨーロッパの古都に幻想を抱いているのかもしれないが、なぜこうも風景が違ってしまったのか。石畳を走るプジョーやマセラティは古城にも似合う。今の日本には文化の欠片も感じない。技術とか通貨はもとより自分たちの源流までダメにしてしまったら何が残るだろう。

ふと窓の外には月が出ている。少し上に見えるのは金星か。反対に下はかすかな木星の光。一列に並んでいる。何も不思議は無い。ただそうあることではないらしい天体現象だ。ただこういう天体ネタを受けるからと言って乱発すると、どうも萎える。星が綺麗だから観察してその実を探るのと、結果から知ってそれを観察するのは違う。

それはそうと、花粉だか何か知らないが一日中鼻水が止め処無かった。こういう日はつまらない駄文を打ち付けず、さっさと寝るべきだ。朝も早いのに静かな夜にいろいろしたくなるのは俺が夜生まれなのと何か関係があるのだろうか。いや、それももはやどうでもいい。
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