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非暴力?いやいや、発言だけ拾うととても暴力的に感じるのだけれど。
ガンディーの経済学――倫理の復権を目指して
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アジット・K・ダースグプタ
作品社
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教科書で習った彼にそこまでの過激さは見受けられなかったけれど、日本だって他の諸外国よろしく歴史的な正しさを正確に伝えているとは限らない。表面的な成果をとってこんな事がありましたなんてやっているから、全然真実が見えてこないのはその時代に生まれていない仕方なさ。いや、むしろそういうところを疑うところこそ歴史には必要なのである。
目次
- プロローグ
- 第一章 序論
- 第二章 選好、効用および福祉
- 第三章 権利
- 第四章 産業化、技術および生産規模
- 第五章 不平等
- 第六章 受託者制度理論
- 第七章 教育
- 第八章 特定の論点―人口政策・ガンディーの先人たち
- 第九章 ガンディーの遺産
p46(抜粋)何となくタイムリーに耳が痛い、といってもおれはその中心にいないので国民としてなんとかしないといけないなあと思うくらいであるけれど。TPPのぐだぐだ感も他の国は上手い事やっている(?)からして、日本は歴史から学んでいないのかそれとも単に耄碌しているだけなのかおれにはよくわからない。わからないけどそんな差なんてどうでもいい。食べる側からすれば料理が出来ない人と出来てもしない人が同じように。
外国との競争を免れた国は存在しない、それどころか主権国家は補助金と関税によって自国の用地産業を保護しようとしてきた
p118
機械は悪いものだと認識する事が必要です。
何か橋下さんみたいなやり口である。後にその過激な発言は口のうまさでもってやり込められた感が否めない。どう切り返しているかは本書で確認してもらえばいい。
機械否定は今の時代にはもはや意味をなさず、皮肉にも地元は今やIT大国の筆頭である。これはかつてガンディーが言ってた個人の手にも簡単に渡るようになった機械の例である事は否定出来ないだろう。彼の言う自給自足に近い「働かざるもの~」的理論も言わば進化の途上にあり、個人の出来高を交換する事によって自らの暮らしを良くした歴史の流れの一部に過ぎないのだと感じる。
それに
p85(コミック)/103(完全版)
時代を創るのは「刀」ではなくそれを扱う「人」でござる
とあるよう、やたら依存する事に問題がある事は現状では自明。本人もその境目は個人を助けるところと個性が無くなるところと後に言っている。
また、過去のどんな金持ちだって今ほどの快適さは持てなかっただろう。例えば秀吉だって各国の情報を手に入れるのにネットは使えなかったし、移動にレクサスも使えない。医療も食料もそれぞれの進化でもって今の規模を支えている。
大事なのは個であると述べるなら、機械がもたらした技術の進歩による一人一人の生活の向上をもっと受け入れていいように思うけどねえ。善とか悪とか言う前に。
経年、多くの人がしていた仕事が情報処理技術で格段に楽になったし早くなった。別に人の手を煩わせずに済むならそれで良いし、どうしても人でやらないといけないものが減ったところで人の存在理由を曲げる事にはなら無い。ガンディーの時代から三倍に増えた人口だって、ITに従事するようになる人も同時に増やしているはず。何せITはカーストのどれにも当てはまらないんだから。
もちろん、新しい技術により生まれる産業についての意識もガンディーは忘れたわけではなかったそうだが、根本に働かざる者~と言う意識があり働かせないといけないと言うバイアスがあると言う事もまた間違っていないのではないかと思う。
しかしながら、非暴力不服従としか連想しえなかった彼の経済に対する見方や、それに付随する倫理観に触れる事は多くの発見があった。目新しい何かを見いだすと言うよりかは実はそんな事考えてたのかと確認するような一冊であった。
正月、年明けとかっていうのもいちいち心を新たにするばかりでなく、自分のやってる事を整理してみるのも良いのかもしれない。まあ、おれはそんなことしませんが。